
私が一番大切にしている「資金繰り」についての、お話をさせていただきます。
資金繰り表とは、入ってくるお金と、出ていくお金を、一覧に示して、収支の過程を明らかにした表のことです。
要は、奥様がつける家計簿や、子供のおこづかい帳と同じものです。
こう説明すると、すごく簡単で取り組みやすい感じがしませんか?
今まで、会計の世界ではあまり重要視されてきませんでした。
融資を審査する金融機関も、決算書の分析には血眼になりますが、資金繰り表は割りとスルーな感じです。
それを証拠に、貸借対照表や損益計算書と照らし合わせて、明らかに辻褄が合っていないケースでも発見できないこともしばしば・・・・・あっ、これは言ってはいけないことだった。
しかし近年、キャッシュフローという格好いい言葉を、よく耳にします。
直訳すると、「お金の流れ」です。 ただ、それだけ・・・・・。
日本では1999年度から、上場企業に対してのみ、キャッシュフロー計算書の作成を法律上義務付けておりますが、中小企業ではまだまだ浸透していません。
「何それ? 何か聞いたことある。」
こんな感じです。
世間一般的に言われている、キャッシュフローというものについての考え方は、貸借対照表や損益計算書と同じように、過去の記録の資料なのです。
昨日までの、お金の出入りなのです。
私が最も重要視しているのは、昨日までの・・・・・ではなく、今日から先の・・・・・なのです。
「そんなこと判るわけないだろ。」
「予定は崩れるに決まってるんだから、あまり意味ないでしょ。」
資金繰り表があまり大切にされない理由は、その辺に理由がありそうです。

川の流れを、お金の流れに例えます。
川の写真を見ても、静止画ですから、大きさや雰囲気は見えても、流れの勢いまでは判りません。
これは「貸借対照表」のイメージです。切り取った瞬間のデータです。
では、実際に直接、自分の目で川を見ると、流れの勢いも判ります。
でも、自分の立っている位置より、上流ばかり見ているとどうでしょうか?
過去の流れだけを追っていても、この先どうなってしまうのかは見当もつかない。
流れの先の下流が大事なのです。
水があふれ出てしまうのか。枯渇してしまうのか。
あふれ出るなら、先回りして支流を作る。ダムを作ってしっかりためる。
枯渇するなら水を足す。
お金も同じです。
大事なことは、今より先、未来がどうなるのかを知ることです。
見えないはずのものを見るのには、大事なことがあります。
仮説を立てる。
と、いうことです。
「去年と同じ売上高を維持できるとしたら・・・・・。」
「前年比20%UPの売上高を達成したとしたら・・・・・。」
「スタッフを3人増員したとしたら・・・・・。」
「あの取引先との契約が終了したとしたら・・・・・。」
そのとき、そのときのあなたの事業に必要な課題を、仮説で検証するのです。
明るい未来の仮説もあれば、苦しい未来の仮説もある。
でも、事業を守る、生き残るためには、未来を直視しなければいけない、ということです。
その仮説(予定・目標)を、現実がなぞっているのか、チェックする。
未来と現実を見比べる。
検証する。
修正して実行する。
キャッシュフロー計算書には、一般的な書式があります。 ご紹介します。

営業活動キャッシュフローとは、商品の販売や仕入、給与や水道光熱費、支払利息など、 商売に関連する入金支出。 損益計算書の区分では経常利益までの範囲になります。
投資活動キャッシュフローとは、設備の取得や売却、有価証券や積立保険の購入支出など。
財務活動キャッシュフローは、借入金や手形の割引など、主に資金の調達に関係する収支 です。 毎月の借入金返済の元金部分はこの活動に該当します。
皆さんが頭に思い浮かべる資金繰り表は、収入・支出がそれぞれ、ひとかたまりになっているものだと思いますが、頑張って、ぜひともこの「キャッシュフロー計算書」型で管理していただきたいものです。
この書式の非常に優れているところは、見慣れてくると、お金に色が付いているように理解できるからです。
「トータルの収支は非常に苦しいけど、営業活動ではまだまだプラスになっているから、財務活動が手当てできれば、何とかいけそうだ・・・・・。」
「あらあら、半年前に手持資金で設備投資しちゃったから、今になって納税資金が無くなったのか・・・・・。」
「売上があるのに、お金が無い理由は、回収が大幅に遅れているせいだ・・・・・。」
こんな風に。
そして資金繰り表には、貸借対照表や損益計算書のようなカラクリはありません。
難しい理屈も税法も関係ありません。
ですから、直感的に理解できるのです。
この直感的に理解できるというのが重要なのです。
理解できるから、課題に対して行動に移せる。
幾ら高尚な理論でも、経営者が行動に移せないのでは意味がありません。
「え〜製品回転率と当座比率は上昇しておりますが、売上総利益率は下降しております。引き続き経営努力が必要です。」
「は、はぁ・・・・・。 はぁ?」
これよりずっと役に立つというものです。
キャッシュフロー計算書は、貸借対照表と損益計算書のデータから作成することができます。
毎月の試算表を正しく、かつ、なるべく早く仕上げたい理由はここにあります。
私は、試算表は「精度の高い資金繰り表」を作るためにあるものだと考えています。
また、試算表が無くても、通帳や現金出納の記録がきちんとあれば作ることはできますが、やはり事業をやる以上、試算表は作成するべきです。
そんなにお金を掛けないで、経理処理をアウトソーシングすることもできる時代です。
「明日の事実を知るために、過去の事実を収集する。」 必要性があるのです。
今は、会計のこと何も判らないとおっしゃる起業家のあなたに、1つアドバイスがあります。
会計を学ぶうえで、簿記の勉強をする前に、資金繰り表を作れるようになってほしいのです。
これさえ、きちんと見守っていれば、決して事業の行く先を見誤らないからです。
事業を止めなくてはならない理由は、結局のところ、資金が尽きるからなのです。
赤字になったからではないのです。
黒字であっても、資金が底をつけば、事業を継続することはできないのです。
「資金を守ることこそが事業を守る。」
それは難しい理屈も、公式も、方程式も必要ありません。